僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「っ! な、に……!」


大股1歩で近付いてきた祠稀に、両手で顔を抑えられる。突然のことに驚きながら、されるがままに祠稀を見上げた。


「もっかい言えよ」

「……何……」

「同じこと、もっかい言ってみろ」

「意味分かんない……」

「大好きでもなければ大嫌いでもなくて、なんだって?」


間近に迫る祠稀は、目元に微笑みを帯びているのに怖い。


怒ってるとかじゃなくて……祠稀だから、怖い。


何も恐れない、強気で強引で、常に何事も勝つ気でいる。結果なんて、気にもしないくせに。


「……なんだ。自分から嘘はつけても、強制されると言えねぇのか」

「っふざけないでよ!」


祠稀の手を掴んで離そうとすると、逆に今度は手首を掴まれてしまった。


「お前こそ、あんま俺をナメんな。お前の言葉ひとつで傷付くほど、弱くできてねぇんだよ」


タフだとでも言いたいのか。そんなの、いちばん迷惑だ。


「どうしたら諦めてくれるの」

「諦めるつもりなんてねぇよ」

「……理解できない」


話にもならない。

そう思って、祠稀から目を逸らしてベランダを出る。


風で揺れるカーテンを視界の端に捉えると、突然そこから手が伸びてきた。


同時に左手を掴まれ、反射的にあたしは振り返る。


視界の端に映ったのは祠稀の右手で、それがあたしの頬に触れた瞬間、掴まれた手を引き寄せられた。


「っ……ヤダッ!!」


顔を逸らし、空いてる右手で祠稀の胸を押し返しても、距離が開かない。


キスされそうになっただけなのに、食べられるかと思った。噛み付かれるかと思った。


「理解できねぇのはこっちだよ」


痛い。そんなに強く握られたら、血が止まる。


睨み上げると、祠稀は今日でいちばん怒った表情をしていた。
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