僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……」
小柄でかわいい、あたしが憧れるもの全部持っている有須が、ドアの前に立っていた。
「有須」
掴んでいたあたしの手を放し、有須の元に向かう祠稀の背中を見てから、痺れる手首を見つめる。
赤くなってるし……どれだけ強く握ってたか、自分で分かんないのかな。
手首をさすっていると、「凪」という弱々しい声。見ると、有須が祠稀よりも1歩前に出て、泣きそうな目であたしを見ていた。
……今度はふたりで責めようとでも?
責められるようなことは、充分してるけど。
「凪、あの……」
「来ないで」
恐る恐る歩み寄ってきた有須に、強く言い放つ。
途端に悲しげな表情に変わる有須もまた、緑夏ちゃんとは似ていない。
あの女は、自分が幸せならそれでいいんだ。
「凪……どうすれば、凪は救われるの……?」
「ないよ。救う方法なんてどこにも」
有須が出てきたことで、数秒でも落ち付く時間ができてよかった。
祠稀の強引さに流されてはいけない。有須の涙に揺らいではいけない。
あたしは、凪は、とても汚いんだと理解してもらう。
「あのね? よく聞いてほしいんだけど……」
にこりと笑みを作って、胸の前で手を絡ませた。
「自惚れんな」
開けっ放しの窓から、冷たい風が入り込む。それ以前に、あたしの言葉で空気は固まったみたいだけど。
「好きだとか、救いたいとか、そういうのいらないの。逆に好きなら、救いたいなら、今すぐその口閉じてくれる? 黙って。うるさいの。煩わしいから、ホントに」
「っお前なぁ!!」
「祠稀っ!」
「なんで怒るの? あたしが言うことは、信じないんじゃなかったの?」
グッと押し黙る祠稀に笑みを絶やさず、あたしは髪を耳にかけてから首を傾げた。
「信じちゃダメだよ? ねぇ、有須も。あたしは彗を手放さない。誰にもあげないから」
目を見開いた有須に笑顔を向けても、反応は返ってこない。祠稀も、眉を寄せるだけで何も言わない。