僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……どっちでもないよ」
そう涙声で言いながら、有須は椅子に座る。
祠稀のように、怒って先に学校へ行くこともできるはずなのに、有須は歯を食い縛って、この空間に残ることを選んだ。
「そうなの? じゃ、いただきまーす!」
本来なら雰囲気を明るくさせるような凪の声色は、今は逆効果。
重苦しいというより、何か黒い物がベッタリと体中に張り付いて、居心地が悪い。
それはきっと、凪がわざとこの雰囲気を作り出してると俺も有須も分かってるから。
だけど俺が居心地が悪いと思うのは、凪にそういうことをさせてるからだと思う。
あの日から数日経った。颯輔さんがサヤだとバレた、あの日から。
「……」
後悔ばかりだ。
緑夏さんが来ると分かってたら……来た瞬間に何か理由をつけて追い出せば……。
きっと今ごろ、みんな笑顔で朝ご飯を食べていた。
「彗、醤油取ってー」
「……ん」
L字型のダイニングテーブルで、俺の右には凪が座って左には有須が座る。
有須の隣にはいつも祠稀が座ってるんだけど、今頃どこかで煙草でも吸ってるんだろう。
「凪……醤油かけ過ぎ」
「うるさいっ! いいんですぅー」
少し視線を左に移すと、有須は俯きがちにご飯を食べていた。
……どうすればいいか分からないんだと思う。何を言えば伝わるのかも。それでも有須は、凪の前から逃げようとしない。
分からないのなら向き合って、伝わらなくても自分の言葉でものを言う。
それがどんなにつらくても、有須はひとりでも頑張るんだろうな。
有須は強い。うまく、言えないけど。
小柄な外見も、控えめな性格も、か弱そうに見えるのに。
耐え忍ぶことに関しては、俺を含む3人の中で誰よりもできると思う。
……だからって、傷付かないわけじゃないんだろうけど。