僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「あ――! 凪!と、有須ちゃんと彗ぴょん!」
……ぴょん?
3人で登校していると、背後から底抜けに明るい声がかけられる。
ほぼ3人同時に振り向くと、遊志先輩と大雅先輩がこちらに向かっているところだった。
「いやーん! 凪っ! 今日も美人!」
「いやーんて。相変わらずアホだね」
駆け寄ってくる遊志先輩は、凪の手を握ってキャッキャッと女子みたいに騒ぐ。その手を凪がさりげなく解かないことに、少し驚いた。
「つーか祠稀は? おらへんけど!」
「祠稀なら先に行ったよ」
「え!? 何事!?」
「遊志うるさい。おはよう、3人共」
ゆっくりこちらへ向かってきた大雅先輩は足を止め、祠稀がいない理由を分かってるように笑みを浮かべる。
「なーなー、なんで遅刻サボり魔の祠稀が先に学校行くん?」
「ハイハイ、いいから。行くよー」
凪は遊志先輩の手を引いて、先に歩き出した。
その様子を黙って見る俺と有須に、大雅先輩が興味深げな視線を向けてきたけど、気付かないふりをする。
「喧嘩でもしたのかな」
祠稀が先に学校へ行くのは今日始まったことじゃないんだけど。
喧嘩したと思うなら、本当の理由は分かってなくても、おおかた検討はついてるんだろうな。
祠稀が凪に想いを寄せていることも、それを凪があしらってることも、遊志先輩を通して知ってるんだから。
「……まあ、そんな感じです」
「ふぅん? 祠稀くんも不憫だね。ま、俺には関係ないし、むしろ好都合だけど」
そう言いながら有須に視線を移す大雅先輩に、俺は眉を寄せた。
「王子様も大変だよね、板ばさみにされて」
「……?」
背中に手を添えながらかけられた言葉に、有須はきょとんとする。
「なんでもないよ。ね?」
大雅先輩は心の籠ってない笑顔を俺に向けてから、有須の背中を押して歩くよう促した。
まるで俺から遠ざけるみたいに、傷付けるなとでも言いたげに。
……あんなことをした大雅先輩にだけは、言われたくないけどね。