僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「う、げっ!」
突然、大雅先輩と有須よりも先を歩いていた凪が、遊志先輩の隣で奇声を上げる。
「携帯忘れた!」
「あ~らら。ホンマに? 鞄の中ちゃうの?」
そう言われて凪は鞄の中を漁るけど、いつもブレザーのポケットに入れてるからないと思う。
「ない! 戻る!」
「今から? 遅刻するよ」
大雅先輩に言われても、凪は鞄を肩にかけ直して元来た道を引き返す。
「いいよ別に。チカと連絡取ってたから、携帯のが大事」
……チカ? なんで?
「一緒に行く?」
大雅先輩と有須の横を通り過ぎた凪が俺の目の前に来て、だけど凪は緩く首を振った。
「大丈夫。彗は学校行きな。あたしは少し遅れるから」
腕を伸ばして俺の前髪に触れた凪は、「ハネてる」と微笑んでから後ろへ振り返る。
「みんな先行ってていいから、彗のことちゃんと連れてってね」
「俺も行くぅーー!」
「「は?」」
遊志先輩が叫ぶと、大雅先輩と凪の声がハモった。
こちらに向かってきた遊志先輩は凪と俺の前で止まると、なぜか俺にズイッと顔を寄せてくる。
「なんや祠稀の気持ちがよう分かったわ! 俺、が! 凪、と! 戻る!」
「……どうぞ」
「っきー! その余裕が嫌や! 戻んで凪!」
「は!? なんで遊志まで……! ああもうっ、じゃあ、また学校でね!」
遊志先輩に手を引かれながら凪は言って、ふたりはマンションに戻っていった。
木枯らしが吹いて肩を縮ませると、「ヤキモチだよ」と大雅先輩が有須にわけの分からない説明をしていた。
……俺にヤキモチを妬いたところで、意味のないことだと気付かないのかな。
「す、彗っ。行こう?」
凪と遊志先輩の後ろ姿を見ていた俺が振り返ると、有須が鞄の紐を握り締めて俺を待っていた。
「……うん」
有須は俺のことが嫌になってないのかなとぼんやり思いながら、脚を前に進める。
凪と颯輔さんのことは、他人に干渉してほしくない。
そう思いながらも有須の優しさを蔑ろにできない自分が少し、嫌だった。