僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「放課後まで待てへんもーん」
「いやいや……まだ1時間目終わったばっかなんだけど」
凪はそう言いながら笑っていて、遊志先輩があとひと押しすれば帰るんだろうなと思った。
「たまにはえぇやん!」
「まあ……いいけど、教室来る前にメールとかしてよ」
「ふふん! 俺知っとんねん! 直接誘ったほうが頷く率高いねんで、凪」
「「……」」
「ちょ、なんで黙るん! 当たりやろ!?」
当たりだ。
伊達に何度も凪のことを誘ってないな、遊志先輩。
凪も図星を衝かれたんだろうけど、それを顔に出すことなく口の端を上げた。
「遊志、声デカい」
「ちょお、なんなん! 魅惑の遊志ボイスに向かって!」
「ははっ! 分かったよ、行くから。遊志は先に下駄箱行ってて」
「えー。一緒に行……分かりましたぁーっ! ……彗ぴょんのバカッ!」
どうして俺がバカなんだと思いつつ、泣き真似をしながら祠稀たちのところへ向かう遊志先輩を見送った。
そのまま凪を見ると、目が合う。すでに鞄を持って立ち上がっていた凪は、俺の前髪にゆっくりと手を伸ばした。
「……そんなに伸びた?」
「ふふ、うん。邪魔じゃないの?」
「……」
前髪を掻き分けられ、確かに視界がよくなったと凪の顔を見て思う。
俺を見下ろす凪の瞳に愛しさが含まれているのが分かって、口を噤むほどには。
「……何時に帰ってくる?」
ぽろりと出た言葉に凪は驚いたのか、目を丸くした。
こんなこと言ったらまた甘えん坊だとか思われそうと分かっていたけど、それはそれでいいと思う。凪が嬉しそうに微笑んでくれるなら。
「祠稀と有須だっているのに」
くすくす笑う凪は俺の前髪から頭に手を移動させ、緩く撫でてくれる。
母親が子供にするような、飼い主がペットにするようなそれは、俺の心をそっと包む。
「……」
無性に抱き締めたくなったけれど、ここは教室だからと踏みとどまる。それはきっと凪も同じで、僅かに俺に寄せた体を止めた。