僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「凪ーっ! はよ! 休み時間終わるで!」
予鈴が鳴り響く中、遊志先輩が叫ぶ。
凪は俺の頭から手を退け、「んー」と生返事をしたあと不満そうに呟いた。
「……だから先に行っとけって言ったのに」
「……だね」
温もりが離れると、なんでこんなに切なくなるんだろう。
「じゃあね彗。寝てばっかじゃなくて、ちゃんと授業受けるんだよ?」
「気が向いたらね」
「うーわ。これだから頭いい人は」
……そんなつもりで言ったんじゃないのに。
「あとそうだ。彗、」
凪は離れ際に俺の耳元まで顔を寄せ、囁いた。僅かに目を見張り、揺れる赤髪に導かれるように凪を見上げる。
微笑みは俺に背を向けて、祠稀たちのところへいる遊志先輩のもとへ行ってしまった。
「凪帰んのー?」
「堂々とサボりかよっ」
「あははっ! うまく言っといてー」
途中途中でクラスメイトに声をかけられながら、凪は遊志先輩の前で立ち止まる。無論、祠稀と有須の前でもあるんだけれど。
祠稀も凪も何を言うでもなく、目すら合わせず、有須はそんなふたりに挟まれながら、凪に何か声をかけていた。
「じゃあね凪ー」
「先生にチクッとくわー」
「やめろバカッ!」
「ほなお邪魔しました~!」
騒がしかった教室の廊下側は凪と遊志先輩がいなくなったことで落ち着いていく。俺はそこから目を逸らし、机の上で重ねた腕に顔を埋めた。
丸めた背が、軋む。
……寒いな、この教室。12月なんだから当たり前だけど、元々寒いのは得意じゃないし好きでもない。
本鈴が鳴り、その音を聞きながらも顔を上げることはしなかった。
帰った凪のことは、クラスメイトの誰かが適当に言うだろう。
……そういえばもうすぐ凪の誕生日だ。俺も祠稀も有須も誕生日は過ぎたから、凪もやっと……16歳。
外見こそ大人びてはいるものの、改めて年齢を思えば複雑な気分になる。
凪は16という年齢に、何か特別なことを思うだろうか。