僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「おーい、そこ誰だ? 夢虹か? 起立だぞー」
「……」
もう来てたんだ。
顔を上げると教壇には教科担当が立っていて、クラスメイトが遠慮がちに俺を見ていた。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
「……いえ」
それだけ言うと教師は腑に落ちない様子で号令を促し、日直の声に頭を下げてから席に座る。そして再度、机に突っ伏した。
思えば学校では、凪が欠けるということはなかった気がする。
基本的に凪は真面目だからサボったりしないけど、その時は必ず一緒にいた。
ふたりの時もあったし、夏には……有須の問題が解決した時は4人でサボって遊園地まで行ったり。
……ああ、そういえばその頃か。颯輔さんと緑夏さんが入籍したのは。
颯輔さんは夫になって、緑夏さんは妻であり、凪と一応俺の母親になった。いきなり高校生の子供ふたりができる気分て、どうなんだろう。
「……」
関係ないか。今は、あと2年以上は確実に、俺も凪もあのマンションにいるんだから。
――本当に?なんて、考えること自体無意味な気がした。
あのマンションにはいられるかもしれないけど、4人がそろうことはもうないかもしれない。
あの夏の日のように。駅まで競争して、バカみたいに笑って。
嘘でも、凪が作りあげたものだと頭では分かっていても、心から幸せだと思えたあの日のように。そんな時間はもう二度とこないかもしれない。
それでもいいと思う。凪がそれでいいと言うのなら。
「夢虹のもう片方はどこ行ったー?」
「あー、何か具合悪いとかって」
「保健室か? ……おーい夢虹。お前何か知らないのか」
――知ってる。凪のことなら、なんでも。
「……知りません」
顔を上げて、そう言った。教師は怪訝な顔をしたが、「早退な」と自己完結させる。
俺は再び机に突っ伏すことはせず、頬杖をつきながら教科書を見るふりをした。
……早く家に帰りたい。
隣の席に凪がいないだけで募る不安が、自分の弱さを浮き彫りにさせる。
――俺はきっと、生きるのが下手だ。