僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


俺が開ける前に勢いよく開いた戸口。驚きから目を見開くと、祠稀が俺の存在に気付いた。


「凪どこ行ったんだよ!!」

「……どこって」


遊志先輩と遊んでること、知ってるでしょ?


そう言えなかったのは、祠稀の表情とアウターも着ずに飛び出してきたことを不思議に思ったから。


「今すぐ電話しろ! クッソあいつふざけやがって!!」


ガンッ!と祠稀の拳がドアを叩き、反射的に目を細める。


「……何をそんなに……」


イラついてるのかと思ったけど。ドアを殴った祠稀の拳が握り締めている物に、余計意味が分からなくなる。


「……何それ」

「いいから電話……っ!」


今にも噛み付いてきそうな祠稀の手首を掴み、力の加減もせずに引き寄せる。祠稀が握り締めていたのは、やっぱり数枚の1万円札だった。


「これ、何? どうしたの?」


祠稀のお金だってことぐらい分かってるし、俺が聞きたいのは何で万札をぐしゃぐしゃに握り締めてるのかってことだ。


「俺が聞きてぇよ!」


掴まれていた手首を払い除けた祠稀は、そのまま俺を睨む。


行き場のない感情を俺にぶつけるみたいに、怒りとも憎しみともとれる視線を浴びせるだけ浴びせて、視線を落とした。


俺が聞きたいって、何? 祠稀の金じゃないなら、誰の……。


「――…」


ゾッとした。


祠稀がもう一度俺と目を合わせたからじゃない。


先ほどとは違う苦しげな表情に、祠稀が苛立っていたわけに検討がついたから。


祠稀の肩を押し退け、靴を脱ぎ捨て廊下を進んだ。


凪がリビングにいないことは分かってる。代わりに在るものが、俺をドン底に落とすことも分かってる。


だけど信じられなかった。この眼で見ない限りは、信じたくなかった。


祠稀が開けっ放しだったおかげで、俺はすぐにリビングへと脚を踏み入れる。


隣にあるキッチン。それを囲むようにL字型をしたダイニングテーブルの、下。


に落ちている何枚もの万札は、祠稀が投げ捨てたんだろう。


……見たくない。だけどもう、目に入ってしまった。
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