僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「なんで祠稀にそんなこと――…!」
「俺じゃねぇよ! お前が好きで大切で依存してる凪が決めたんだろーが!」
祠稀はそう声を荒げて踵を返すと、床に落ちていた便箋を拾って再び俺の前まで戻ってくる。
「見ただろこれ。ご丁寧に金まで置いていきやがって。これは、凪が決めたことだ」
「……やめて」
「凪が決めたことに、俺はどうするかも決めたんだよ」
続く言葉が分かる。やめてほしいのに、そんなものは要らないのに。突き付けられた便箋が、俺を逃げられない現実に閉じ込める。
「彗。自分はどうしたいか、お前が決めろ」
「うるさいなっ!」
もう嫌だ。
嫌なんだ。
弱い、弱い。
こんな弱くて脆い自分なんて、根こそぎ捨ててしまいたい。
「祠稀は分かってない! 凪のことも、俺のことだって……分かった気でいるだけで、何ひとつ……っ」
違う。そうじゃない。
こんなことを言いたいんじゃない。だけど他に何を言えばいいのか分からない。
言葉が重くて、重くて、濁流のように胸の奥で渦巻く。
そこから上手い言葉を引き出せないから涙が出るのか。それ以上の悲しみがあるから涙が出るのか。
「……凪……」
体が震える。息が苦しい。涙が後から後から溢れ出る。
凪を近くに感じないだけで、俺はこうも弱くなるんだ。
何度だって言える。
俺と凪の関係は恋とか愛じゃないし、そんなものでは表せないと。そんなものとうに超えてるとすら言える。
例えるならそう、心臓。
頭がおかしいと言われてもいいよ。それ以外の表現が見つからないし、それ以上の表現はないとさえ思うから。
どんなに強くたって、どれだけ周りに愛されたって。心臓がなければ人は生きられないでしょ。
俺にとって凪は、そういう存在なんだよ。
それなのに……どうして。