僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「頼むよ彗……」
祠稀の綺麗な頬に涙が流れた時、俺の瞳からも涙が落ちた気がした。
ぼろっと落ちたような気がするけど、引っ込んだ気もする。だけど後から滲む涙が、後者を否定した。
……引き寄せられる。いつも、いつも。
暗い場所でひとりうずくまってる俺を、凪は抱き締めてくれるとすれば。祠稀は無理やりにでも俺の手を引いて、立ちあがらせようとしてくれる。
拒んでも、拒むたび、その力は強くなってる気がした。
「今は嘘でも冗談でも、兄貴でも友達でも、ただの同居人でもなんだっていいから……自分でこっちに来い」
――今さらだと思った。
公園ではしゃぐ子供たちを見て、溢れる気持ちが。
あんな風に自分も生きていたらって。今頃どんな自分だったろうって……。
そんなのただ虚しくて、今の自分を、凪と過ごした時間をなかったことにするようで。そんな考えは消したんだ。
それでも強く深く胸の奥に根を張る気持ちは、簡単に芽を出す。何度も何度も、この家にいる分だけ。
……ねぇ、もう。過ぎてしまったことは今さらどうしようもないことだけど。
「彗」
俺は今からでも、あんな風になれる?
弱くて弱くて、祠稀や有須のような強さなんてないけど。弱い自分が恥ずかしくて、嫌いで堪らないんだけど。
言ってほしい。それこそ嘘で、冗談でもいいから。
「大丈夫だよ、お前は」
――差し伸ばされた手を、握り返したかった。
本当はずっと、ずっと。傷だらけの左手を、錆びついた心を温もりが包んでくれたから。
4人でいることが楽しかった。
幸せだとも思ってたよ。
だけどそれを認めたら凪が離れて行ってしまいそうで、自分の気持ちをごまかしていた。
……ごめん、凪。
そんな俺に気付いていたから、連れて行かなかったんだよね。
凪だけに依存しなくたって生きていけると。自分の脚で歩いていけると。もう大丈夫だと思ってくれて、ありがとう。
ふたりでいることが何より幸せだった。
他の誰といるより安心した。
凪の隣が、俺の居場所だったよ。それだけは、揺るぎない事実。
だからごめんね、凪。