僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
◆Side:祠稀
見捨てるほうが簡単だった。
信じるより疑うほうが簡単なように、もう彗も凪もほっけとけと思えば、自分が傷付かずに済むから。
いつだってそうだ。
我が強くて、すぐ手が出て、頭に血が上りやすくて。臆病な自分を隠したいから勢い任せで、その場任せで、虚勢を張るのが得意なだけ。
きっともう一生変わらない。だけど嫌じゃない。それが俺だと思えてきたから。そんな俺を受け入れて、怒って笑ってくれる奴がいたから。
だから俺は、何度大切な奴を見捨てようとしても踏みとどまって、歯を食いしばって振り返る。
自分がこう在りたいと望むたび。
ヒカリに誇れる生き方をしたいと思う限り、何度だって。
「!」
「言うのおせーんだよ!」
弱くもなく、かと言って目いっぱい力を込めたわけでもなく、彗の額を叩いた。そのまま髪の毛をぐしゃぐしゃにした理由は、本人も分かってるだろう。
手を離した俺を見る彗の表情は、陰ってなかった。
……ほんと、世話が焼ける。こいつを完全に見捨てろっていうほうが無理な話だ。
「……って分かって任せたんだろうけど」
彗が不思議そうな顔をしたけど、適当に口の端をあげて流した。
「とりあえず、なんか飲むか」
「……淹れてくる」
キッチンに向かう彗を見遣ると、自分で床に投げ付けた万札が目に入る。
近くに落ちていた便箋を拾い、読み返そうとしたけどそんな気分にもなれなかった。
学校からまっすぐ家に帰ってきたら、これだもんな。
リビングに入った途端、視界の端に映ったのは札束と凪からの手紙。
札束もだけど、手紙も意味不明過ぎる。自分勝手で、けっきょく自分のことは何ひとつ話さない。
許してほしいなんて思ってないだの、謝るのは自分のためじゃないだの。そんなことは分かりきってる。
あえて伝えるところが厭らしくもあり、凪らしい。
いちいち言われなくても知っていた。凪が言うように、気付いていたから。
彗の気持ちが、揺れていると。