僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「……」

彗が自分の携帯を手にしたのを見て、眉を寄せた。


電話しろと言ったのは俺のくせに、あんまり胸が痛くなるもんだから、彗はもっと痛いんじゃないかと思えて。


「だいたい分かった……どーもな」

『どういたしまして。ところで遊志の落ち込みっぷりがウザいんだけど、どうすればいいと思う?』

「……また連絡入れるからジッとしてろって言っとけ」

『そう? じゃあよろしく』

「じゃーな」


ほんと抜け目ねぇ奴。何が、どうすればいいと思う?だよ。


電話を切って、すぐに次に電話をかける奴の番号を表示させた。


「……彗」

「……」

「彗っ」


携帯を耳に当てず、画面を見つめている彗。その手に持たれている携帯からは、虚しいコール音が微かに響くだけ。


「……やっぱり出ない」


どうして響き続けるコール音を聴いていると淡い期待が芽生えるのか。


もしかしたら、次出るかもしれない。鳴らし続ければ、出てくれるかもしれない。


そんなものは俺たちの願望だ。


「もういいから。また後でいい。俺は早坂に電話するから、お前はチカにしろ」

「……チカ?」

「凪が今日ずっと連絡取ってたんだろ。ついでに有須の迎えも頼め。俺たちは無理だから」

「……そうだね」


プツリと鳴り続けたコール音が消えたから、俺は早坂に電話をかけた。


あの日、俺と有須で呼び出した日以来かけたこともないし、会ってもいない。


何かしら知ってるはずだ。知らなくても、吐かせる。


凪のカウンセラーとして分かることなんて、山ほどあるだろ。気に食わないし、ムカつくし、どっちかと言うと嫌いだけど。


――『……アンタはじゃあ、凪に死なれちゃ困るから、抱いてるっつーのかよ』


――『それはもちろん。死なれちゃ嫌だ。好きだからね』


あれは、あの目は、凪を本気で好きだと言っていた。そんな奴が、凪がいなくなったと聞いて黙ってられるわけがない。



「「もしもし?」」



きっと凪は、誰にも頼らず家を出た。

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