僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「……じゃあ、チカはそれに気付いて、どうするようになったの?」

「うん? うーん……会話をするようになっただけかな。相手の話を聞いて、自分の話もするようになって……さっきの有須と先輩みたいな感じ」

「……会話って大事だよね」


話さなければ伝わらない、感じ取れない、分からないことってどうしてもある。だけど話しても理解できないこともある。


……あたしは、凪と話しても何も得られない。感じ取りたいと思うたび、凪はあたしを拒絶して遠ざけるから。


どうすれば、あたしは凪に受け入れてもらえるんだろう。


それともそんなことを本気で望むあたしは、凪が言ったようにやっぱり鬱陶しいのかな。


「――僕、同情って嫌いなんだ」


その言葉に、少しギクリとした。いつの間にか落としていた視線を上げても、チカの顔を見ることがためらわれる。


「哀れまれてるだけで、共感とは別だと思ってるから。だけどそういうのが必要な時って、あるなって思ったことがあるんだ」

「……いつ?」


恐る恐るチカの顔を窺うと、穏やかな笑みがそこにあった。


「枢稀に頭を撫でられた時」


祠稀のお兄さん?


「今一緒に住んでるんだよね」

「うん、僕の勉強見てるのも枢稀だよ。超スパルタなの。参っちゃうよね」


でも嬉しそう。

心の中でそう感じてると、チカは被っていたフードを取り払い、乱れた髪を撫でつける。


「あの人は虐待されたことがないし、父親を警察に突き出したのも弟の祠稀でしょ。そんな弟と似た境遇の僕がね、昔の話をすると必ず撫でてくるんだ」


想像すると、その時の枢稀さんの表情が容易に浮かんだ。


祠稀の兄としてできなかったことを、今はチカにしたいと思ってる。それを、祠稀も望んでるといつだか教えてもらった。


「最初は、そういうのいらないからやめてって言ったんだ。だけどやめなくて、なんでかなって考えた時に、謝ってるみたいだと思った」


……理解できなくて、自分にはその気持ちが分からなくてごめんって……あたしも思うかもしれない。

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