僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「聞いてたよ? よくそんなことが言えるよね。それともあたしに、同情でもした?」
「……っ」
「子供を産むことに罪悪感があるの? あたしがパパの子供じゃないって知ってるもんね? あたしのことかわいそうだとでも思った?」
「凪!」
「違うなんて言わせないから!」
牽制しようとした颯輔さんに声を張り上げた凪は、緑夏さんをきつく睨む。
「堕ろしたほうがいいかもしれない? ねぇ、自分で何言ったか分かってんの?」
今にも緑夏さんに掴みかかりに行きそうな凪を、颯輔さんが前に立ちはだかって止めようとする。
だけど凪の瞳は憎悪と侮蔑を含んで、止まりそうになかった。
「ねえ!! その言葉で誰が傷付いたと思ってんの!?」
「――凪っ! いいから!」
「堕ろすくらいなら子供ごとアンタがどっか行け! 消えろ!!」
「凪っ!!」
「そっ……!」
振り上げられた颯輔さんの手を止めようと、彗が足を踏み出したけど、その手が振り下ろされることはなかった。
「……颯輔さん」
彗の声で、反射的に目を瞑り顔を背けていた凪が目を開ける。
恐る恐る凪が顔を上げるように、颯輔さんもゆっくりと振り上げた手を下ろしていった。体の横ではなく、凪の頬だったけれど。
「……ごめんね」
颯輔さんが凪の頬に触れて謝る意味が、何に対しての謝罪なのか、俺には分からなかった。
それでも凪が唇を結んで眉を寄せたから、俺までそんな顔になる。
「……許さない」
颯輔さんを見上げる凪はそう言って、瞳には涙が堆く滲み、揺らめいていた。
……零れる。凪の溜めこんでた想いが、今にも。
「絶対……許さない」
「……うん」
「……幸せにするって、言った……」
「……」
音もなく流れた凪の涙は、頬を包む颯輔さんの指に落ちる。
次々と落ちるそれは生きてなどいないのに、胸の奥に訴えかける何かを持っていた。