僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「あの日……サヤを幸せにしてくれる?って聞いたのに……もちろんって言ったくせにっ!」
「……っ」
突き飛ばされた颯輔さんはよろめいて、凪はもう一度緑夏さんを睨む。
「サヤを幸せにできないなら、消えてよ……」
そう言われた緑夏さんは涙を流したし、颯輔さんも目に涙を浮かべていた。
俺も彗も有須も、ただ苦い顔をして黙るしかなくて。かけられる言葉なんてひとつもなくて。
――イテェ。
なんで触れられない部分が。胸のずっと奥としか分からない部分が、痛むんだ。
身が裂けそうなほどの痛みが襲っても、比べものにならないんだろう。
ただ聞いてるだけの俺の痛みと、自分の想いが叶うことよりも、颯輔さんの幸せを願う凪の痛みなんて。
「……もうヤダ……」
凪のか細い声が鼓膜を揺らす。
俺が彗の立場だったら、きっと彗と同じように凪を抱き締めてやることしかできない。
今さらそんなこと考えたって、何にもならないけど。自分をひどく、無力だと思った。
「ヤダ、もう……なんのために……」
はらはらと涙を流す凪の瞳は確かに颯輔さんに向けられているのに、見てはいない気がする。
虚ろな眼には深い悲しみに似た淀みが沈んで、誰に向けられたかもわからない言葉は宙に消えた。
「……凪」
このまま自分は何もせず、突っ立ってるだけかと思った矢先、颯輔さんが静かに声を出す。
「凪」
導くように、宥めるように優しく呼ぶ颯輔さんの声。
生気が戻ったとでもいうのか。今度こそちゃんと颯輔さんを瞳に映した凪は、静かに頬へ雫を流す。
「……サヤ」
愛しい。
凪の眼が、声が、そう言っていた。
颯輔さんは微笑むだけで、凪から目を逸らさない。
「サヤ」
呼ぶたびに滲みだす涙は、溢れだす想いが形になったみたいだ。
もったいねぇ……なんて、どうして思ったのか。ただもう、泣いてる凪を見たくないと思った。
……ああ。ほら。また、零れる。
どうせなら、笑顔で伝えて欲しい。
あの笑顔で愛してると言われたら……俺だったら……死ぬほど幸せに思うのに。