僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「ごめん……1文字も読んでない」

「っえー!? ホンマに!?」

「遊志、うるさい」


大雅先輩が振り返ると、祠稀は歩く速度を緩める。


「だって大雅! 俺が送ったあのメール、読んどらんって!」

「メール? ああ……あの時の」


この場にいる全員が凪にメールを送ったけど、誰にも返事はこなかったはず。


「凪、もしかして、あたしたちのメールも読んでない?」

「……うん、」

「まさか携帯ごと捨てたのか。そんで今まで忘れてたわけ? アホ?」


祠稀の問いかけに凪は顔を歪めたから、図星みたい。


「こっちに戻ってくる前に、そういえばとは思ったけど……宿題で携帯どころじゃなかったんだよ」


あたしたち6人は横断歩道の赤信号で立ち止まり、行き交う車を眺めたり、向こう側の歩道を眺めたり。


「まあたいしたメールじゃねーし。いいけど」

「あ、うん。あたしもたいした内容じゃなかったよ!」


祠稀に続いて言うと、凪は少し申しわけなさそうに笑みを浮かべてから、遊志先輩のほうへ顔を向けた。


「ふたりは?」


そう凪に聞かれた遊志先輩は口を尖らせ、いじけたような仕草を見せる。


「俺のはぁ、けっこう大事な内容やったんやで?」

「何言ってるの遊志。あんなの気食悪いメールでしかないよ?」

「嘘やろ……アレ、めっちゃ遊志愛溢れる内容やん……」

「こいつらのメール内容なんてどうでもいいわ」


ハンッ!と鼻で笑い飛ばす祠稀は信号が青になった横断歩道を渡って、遊志先輩は怒ったらしく、その背中を追いかけて行った。


「……祠稀って、なんであぁ突っかかるかなー……」


少し先で騒ぐふたりを見つめながら凪は言って、あたしと彗と大雅先輩は顔を見合わせる。


「凪ちゃん、携帯買ったらちゃんとメアド教えてね」

「は?」


歩き出した大雅先輩は彗と一緒に祠稀たちのほうへ向かって、あたしはふふっと笑みを零した。


「凪、今度一緒に携帯見に行こう!」

「え? あ、うん……ちょ、有須!」


あたしに手を引かれた凪は慌てて足を前に出し、白い線を踏み締める。


冷える空気。少し曇った空。体も温かくならないし、太陽も見えないけれど。あたしの、あたしたちの心はきっと、とても温かかった。

< 726 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop