僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「ごめん……1文字も読んでない」
「っえー!? ホンマに!?」
「遊志、うるさい」
大雅先輩が振り返ると、祠稀は歩く速度を緩める。
「だって大雅! 俺が送ったあのメール、読んどらんって!」
「メール? ああ……あの時の」
この場にいる全員が凪にメールを送ったけど、誰にも返事はこなかったはず。
「凪、もしかして、あたしたちのメールも読んでない?」
「……うん、」
「まさか携帯ごと捨てたのか。そんで今まで忘れてたわけ? アホ?」
祠稀の問いかけに凪は顔を歪めたから、図星みたい。
「こっちに戻ってくる前に、そういえばとは思ったけど……宿題で携帯どころじゃなかったんだよ」
あたしたち6人は横断歩道の赤信号で立ち止まり、行き交う車を眺めたり、向こう側の歩道を眺めたり。
「まあたいしたメールじゃねーし。いいけど」
「あ、うん。あたしもたいした内容じゃなかったよ!」
祠稀に続いて言うと、凪は少し申しわけなさそうに笑みを浮かべてから、遊志先輩のほうへ顔を向けた。
「ふたりは?」
そう凪に聞かれた遊志先輩は口を尖らせ、いじけたような仕草を見せる。
「俺のはぁ、けっこう大事な内容やったんやで?」
「何言ってるの遊志。あんなの気食悪いメールでしかないよ?」
「嘘やろ……アレ、めっちゃ遊志愛溢れる内容やん……」
「こいつらのメール内容なんてどうでもいいわ」
ハンッ!と鼻で笑い飛ばす祠稀は信号が青になった横断歩道を渡って、遊志先輩は怒ったらしく、その背中を追いかけて行った。
「……祠稀って、なんであぁ突っかかるかなー……」
少し先で騒ぐふたりを見つめながら凪は言って、あたしと彗と大雅先輩は顔を見合わせる。
「凪ちゃん、携帯買ったらちゃんとメアド教えてね」
「は?」
歩き出した大雅先輩は彗と一緒に祠稀たちのほうへ向かって、あたしはふふっと笑みを零した。
「凪、今度一緒に携帯見に行こう!」
「え? あ、うん……ちょ、有須!」
あたしに手を引かれた凪は慌てて足を前に出し、白い線を踏み締める。
冷える空気。少し曇った空。体も温かくならないし、太陽も見えないけれど。あたしの、あたしたちの心はきっと、とても温かかった。