僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「用事あるんだ」

「……」

「だから、先に帰ってていいよ」


……用事? それはあたしが着いてったら、ダメなのかな。


付き合わせるのに申しわけないという感じではないのに、凪はどこか寂しそうに笑う。


「早坂先生と逢う約束してるんだ」


元々道の端を歩いてたあたしたちは無意識の内に足を止めて、向き合った。


あたしの表情が固まった理由なんか凪はお見通しで、だから少し寂しげに笑う。


……早坂先生と逢ってほしくないわけじゃない。そんなことじゃなくて……。


「大丈夫。前と同じことを、するわけじゃないから」


ほんと?と、疑ってるわけでも、何で?と訊きたいわけでもない。


早坂先生と凪の関係がダメだと言いたいわけでも、続けてもいいんじゃないかと思ってるわけでもない。


ただ心配で。もういなくならないかと、心配で……。


「……颯輔さんのこと?」


気付いたら、口から出ていた。


このタイミングで早坂先生と逢うということは、それなりに話すことができたからだってことくらい、あたしにも分かる。


凪が帰ってきてから、ずっと聞かずにいたこと。だけど本当はずっと、聞きたかったこと。


凪は颯輔さんへの想いを、どうしたの? どうすることにしたの? もう、何もかも終わってしまった? それとも、何も変わらずにいるの?


楽しく明るい日々は確かに戻った。だけどそれは、流した涙と陰る日々があったから。


凪の笑った顔が好き。


また見られるようになって嬉しいけれど。でもどこかまだ、侘しそう。


だから心配になる。また、仮面を被ってるんじゃないかって。無理してるんじゃないかって。そしたら、またいなくなってしまうんじゃないかって。



「……まだ時間あるから、少し話そうか」


凪はそう言って、あたしの手を引いて歩き出す。


ここに帰ってきた凪が全てで、真実で、だから悪い話ではないと分かるのに。あたしはきっと泣くんだろうなと思った。



――凪の笑顔が見たい。


大輪の花が咲き誇るような、満面の笑顔を。



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