僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
◆Side:凪
あれほど緊張した日はないかもしれない。
退院した日、彗と一緒に家へ帰って、緑夏ちゃんと話して、サヤが帰ってくるのを待った。
彗と昔のアルバムを見ながら、思い出を反芻しながら。楽しかったこと、悲しかったこと、嬉しさ、寂しさ。たくさんのことを思い出しては、胸に刻んだ――。
***――1月7日。
「これでいっか」
和室の押し入れから、厚めの毛布を取り出す。テーブルとクッションしかないあたしの部屋でアルバムを眺めていたんだけれど、彗はいつの間にか眠ってしまった。
毛布を抱えて和室を出ると、ちょうどお風呂上がりの緑夏ちゃんがリビングに入ってくる。
「……彗くん、寝ちゃった?」
あたしが毛布を持ってることで悟った緑夏ちゃんに、笑った。彗のこと、よく分かってる。
「うん、そう。彗って、いつでもどこでも寝れるんだよ」
リビングに繋がる和室の襖を閉めると、玄関の開く音がする。
ピリッと、背筋に電気が走ったような感覚。だけどあたしは表情を変えず、緑夏ちゃんもキッチンに入ってグラスにお茶を注いでいた。
リビングから廊下へ出ると、2日ぶりにサヤと対面する。スーツ姿なんて、本当に久しぶりに見た。
「……おかえり」
「ただい、ま…」
僅かに戸惑うサヤ。なんとも言えない空気。それはあたしが、今日帰ったら話を聞いてくれる?と言ったから。
今、こんな廊下で話すわけはないのに。サヤは、ポーカーフェイスが下手だよね。
「彗が寝ちゃったの。毛布かけたら、リビング戻るから。サヤも着替えてきたら?」
微笑んで、サヤが立つ場所より手前にある自分の部屋へ入った。
――ドッ、ドッ、と体の中から打ち付けるような鼓動は正直。
閉めたドアを背に、サヤがリビングへ歩き出したことが分かる。
……落ち着け。
抱えていた毛布に顔を埋め、何度も言い聞かせた。
顔を上げて軽く溜め息を吐くと、テーブルに突っ伏して眠る彗の背中を見つめる。
なるべく足音を立てないように、彗の横にしゃがみ込んだ。