僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「何もかも、曖昧なままで。凪に無理させたまま、時間が過ぎてって……」
……あたしが、家を出ると言った。確か、中3になって割とすぐの頃。反対されると分かっていたから、早めに切り出したんだ。
「ずっと、悩んでた。凪が家を出ることに反対はしたけど、いいよって言ってあげたほうがいいんじゃないかって」
チクチクと、胸が痛み始める。サヤとあたしは目を合わせたり、合わせなかったり、その都度変わっていた。
サヤは言葉を濁して、額に手をあてる。言い惑ってるということくらい気付いていたし、あたしもまた、聞くには体に力を込めなければいけなかった。
「俺は、きっと……凪が怖かった」
「……」
「明確な理由があるわけじゃ、ないんだ……ちゃんと向き合うことが、怖くて。どう接すればいいか、分からなくて。凪に対してなのか、自分に対してなのか。漠然とした不安が、あったんだと思う」
じわりと滲んだ涙は、悲しかったからじゃない。
あたしと、同じだと思ったから。向き合ってもいないくせに、怖いと怯えて。ひとりよがりの不安は、心をどこまでも暗い場所へ沈める。
「……最終的に、凪が家を出ることで幸せになれるならって思って許したけど。それは、俺と暮らしててもつらいんだろうと、分かってたから思うことだったんだって、今さら気付いたんだ。……バカだね、俺は」
お互いバカだったねと、笑えたらよかった。
そうして許しあえるのが1番いいのに、サヤは悪くないと、あたしの心が訴える。
サヤをそうさせてしまったのは、他の誰でもないあたしで。そんなあたしにしてしまったのは自分だと、サヤは思うんだろう。
終わりの見えない、無限ループ。だから、終わらせなきゃいけないんだ。
「凪」
落としていた視線を上げると、真剣な表情があたしの胸を熱くする。
「今言ったことは、嘘じゃないけど……だけど、凪を引き取って後悔したことなんか、一度もない」
真っ直ぐあたしの目を見て紡がれた言葉は確かな意思を持っていて、迷いなどなかった。