てのひら。


部屋に戻ると私はごろんと勢いよくベッドに寝転がった。


荷物の詰め込まれたボストンバックの奥から、

こっそり持ってきていたケータイを取り出し、家に電話をかけてみる。


しかし、いざ呼び出し音が鳴り始めると、電話などかけていいものかと心が揺らぐ。


やっぱり切ってしまおう―

そう思い耳元からケータイを離そうとすると、何度かの呼び出し音の後に、誰かが電話を取った。


『はい、もしもし』


お母さんだった。


『あ…もしもし、お母さん?私、だけど…』


『亜里ちゃん!?何〜どうしたの〜』


あったかいお母さんの声。

なんだか長いこと聞いていなかったような気分で


“帰りたい”思わずそう言ってしまいそうになったが、私は必死にそれを飲み込んだ。




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