てのひら。
『デブス!!』
ドアの方を見ようとした私の動きが止まる。
部屋にいた3人の会話もぴたりと止んでしまった。
バタンと閉められた扉の向こうからは、ゲラゲラと笑う声がする。
それは紛れもないあの2人のものだ。
『な、何なんだろうね…』
急にこんなことがあれば驚くのも無理はないが、まだ、終わってはいなかった。
再びドアが開き、部屋にはスリッパが投げ込まれた。
そしてまた同じように。
『何あいつら』
珠恵も少しばかり苛立ちを見せ始めた。
限界―
堪忍袋の緒が切れるとはこういう時のことを指すのかと、私は密かに思っていた。
『亜里沙、どこ行くの?』
『このスリッパ、返してくる』
止めておけばよかった。
言い訳にしかならないけれど、あの時の私にはそれを抑える余裕なんてものは、どこにもなかった。
今思えば、考えが幼稚で子供だったとしか言い様がない。