はじまりの合図

『うちら、教室戻るな!授業終わったらまた来なダメやで』

理香子はにかっと笑った。舞は、オッケー、と言うと桜ちゃんを連れて三階にあがって行った。

『担任誰やろな』

ニヤニヤしながら教室の中を覗き込んだ。

「あ、ムカつく奴だ」

『ムカつく奴?誰や、そいつ』

「さっきのアイツ!階段で顔キモい、とか言ってきた奴!」

『あぁ…って、キモいとまでは言ってへんやろ。アイツ、顔は王子様とか思ってたんけどな。』

理香子は期待はずれ、と呟くと教室に入って行った。そのあとを有紗と追うと、教室の中は相当ヤバいことになっていた。

『は?誰に言ってんの、それ』

『どけ、つってんだよ!聞こえてんならどけよ、ハゲ!』

『…俺ハゲてねぇし』

えっ?そこ!?

『ほんま何やっとんの、あれ。またアイツやん、ちゃう?』

「いや、そう。ってか絶対そう」

教室の机と椅子は散らばり、女子は教室の片隅に固まっていた。大体予想はつく。喧嘩でもやらかしたんだろう。

『入れへんやんけ』

有紗は黙って呟くと、教室を覗き込んだ。理香子は教室から出ると、廊下にどかっと座った。

『止めた方がいいかな』

隣で一人の男子が言った。

『…止めた方がええかな…?止めたがええに決っとるやろ、アホ!』

理香子は男子の足首を蹴り怒鳴った。

『あんなくだらん喧嘩、いつまでも見とくかボケ!さっさと止めろや!』

男子は黙っている。…キレるか?それとも無視するか?

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