はじまりの合図
『ゆっこがテンション低いとかあり得へんわ。もっと上げてこ。ただのウザイ奴やろ?明日学校来るに決っとるやん』
理香子は当たり前のように言った。
「そっか、そうだよね」
『うちらも帰る?』
「はっ!?」
『冗談やて、冗談』
私の肩に手を置いて目を伏せた。長いまつげが真っ白の皮膚に影をつける。
「理香子、綺麗だよねぇ…」
『は?何言いだすん?綺麗ちゃうで〜。ゆっこ可愛えやん』
「は、私が?可愛くないし綺麗じゃないし取り柄ないよ」
理香子は私を見て、呆れたように笑ってため息をついた。
『あ、あれ先生やない?あん人がうちらの担任か』
教室の前の廊下を慣れない先生が、緊張した様子で歩いてきている。教室が騒めき、みんなの視点は先生に注目される。
『は、はじめまして!私が三組の担任になります、小川景子といいます。よろしくお願いします!なんて呼んでもいいんで!』
いきなりの弾丸トークに、クラスのみんなは目が点になった。小川景子先生は何とでも呼んでいいといったから、みんなで景子ちゃんと呼ぶことにした。
景子ちゃんは若くて二十代前半くらい。すらっとした体型に、白い肌。高い鼻におどおどとしている、くりくりした目。
『景子ちゃんはぁー、彼氏いるんですかぁ?』
質問をする時間に誰かが聞いた。みんなが質問した人に、視線が集められる。
『いや、どうだろうね』
大人なはぐらかしも出来る景子ちゃん。