窓に影2

 他の男にキスされましたなんて話すのは心苦しい。

 自分の気持ちを整理できないまま帰宅すると、夕食はあまり喉を通らなかった。

「ごちそうさま」

「もう食べないの?」

「食欲なくて……」

「風邪かしら」

 首を傾げる母を横目に自分の部屋に戻った。

 明かりをつけてカーテンをめくる。

 歩はまだ帰宅していないようだ。

 先に行って待ってようかな。

 でも帰宅早々そんな話をするのもなんだかなぁ。

 迷っていると、歩の部屋に明かりがつく前にうちのチャイムが鳴った。

 母の甲高い声が聞こえる。

 こんな時に限って、歩は帰宅せずにうちへ来たらしい。

 ピーンと緊張が走った。

 トットットッ……

 階段を上るいつものリズム。

 私はできるだけ普段通りでいようとベッドに寝転がって雑誌を広げた。

< 168 / 232 >

この作品をシェア

pagetop