窓に影2

 鏡の前で髪を摘んでいる彼はブツブツと文句を垂れる。

 その髪を思いっきりグシャッと乱してやりたくなったが、我慢我慢。

「もう5分過ぎてるよ」

「やべー! 遅れる!」

 髪いじりを終えた歩は財布と携帯だけをポケットに入れ、バタバタと玄関へ走っていった。

 私もそれを追う。

「1時からでしょ? 余裕じゃないの」

「会場で混むんだよ。12時半には着かないと、1時に中に入れないかも」

 ピカピカの革靴を履いた歩は、腕時計を見てため息を落とした。

 もう、寝坊したのは自分でしょ?

 先行き不安。

「じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 決まったようにチュッとキスをして、照れた顔のまま歩は出かけていった。

 私は鍵を閉めて部屋に戻る。

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