ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
地上では座り込んだ私たちを取り囲むように、光の帯が創り出されていた。帯が目映い光を放ち始めると、私たちは更に地面へ叩き付けられた。

まるで上から強い圧力で押されているかのように。或いは地面へ吸引されるかのように。

私たちは押しつぶされた蛙のような格好で、動くことさえできなかったのである。

その間にも女は術文らしきものを唱えているが、先程よりも遠い場所から聞こえてくるような気がした。身体が動けないので確認はできないが、いつの間にか離れた場所へ移動したのかもしれない。

遠くから聞こえてくる女の声が、頭の中を縦横無尽に駆け巡っている。呼吸が徐々に苦しくなってきた。声も出ない。

(な…に、これ…?)

何も考えられなくなってくる。恐らく脳には空気が行き渡っておらず、思考力も低下しているのだろう。

私は魔物が術文を唱えて攻撃するなど、見たことがないし聞いたこともなかった。元より精霊力が能力として備わっている魔物には、精霊石も術文も必要ないのだ。

(まさかあの女……上位クラスなんじゃ……)

意識が混濁する中で、そのような考えが頭を過ぎった。私は遭遇したことはないが、上位クラスは精神攻撃を得意とすると聞いたことがある。
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