ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
これは明らかに精神攻撃だった。先程エドが使ったスリープやコンフュージョンもこの部類に属するのだが、それと似たようなものなのかもしれない。

私には上位と中位の区別はつかなかったが、もしあの女が上位クラスの魔物であるならば、私には最早為す術がなかった。

中位クラスでさえ倒すことができないのである。更に上のクラスになど、どのような方法で倒せというのだ。

何れにせよ身体を動かすことのできない私には、これ以上抗えるはずはない。既に観念し、全身の力も抜いている。

身体が宙に浮いたように軽くなったような気がした。死ぬ瞬間とは、こういうものなのだろうか。

しかしこれほど早く、死に直面することになろうとは。

まだ旅立ってから1週間くらいしか経っていないというのに。

運がなかったのだ。

せめて最期くらいは家族の元で死にたかった。それだけが唯一心残りである。

「貴様らをここで殺すのは、赤子の手を捻るよりも簡単だ。だがそれでは逆に単純すぎてつまらぬ。
それに我らにとっては『鍵』でもあるからな。
精霊に選ばれし者が現れた記念として、今回は特別に延命させてやろう。
何れにせよ貴様らは再びわらわと会うことになる。全員の集結時にでも、また会いに来るがよい。
もっとも、それまで生き延びていられればの話だがな」

遠くなる意識の中で、女の声だけがはっきりと聞こえていた。
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