ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
私はようやく正気を取り戻すと、慌てて男から身体を離した。
「ここは敵のアジトにぃ〜、近いんじゃなかったでしたっけ〜」
メロディに乗せるかのように、男は喋りながら唄う。
前髪を眉付近で真っ直ぐに切りそろえた、赤みがかったブラウン系の癖のない髪。目の色が判別できないほど度の強そうな丸い眼鏡を掛けている、私と同年代くらいの少し太めの男だった。
背は私よりも若干低めだ。小柄な体型のわりには服の上から羽織っている青いマントが、少し大きいようにも感じられた。
隙間から覗いている手には小型のハープが握られていた。先程から聞こえてくる音は、この楽器から奏でられていたものだろう。
格好は明らかに吟遊詩人だった。現に持っているハープには、精霊石が埋め込まれている。吟遊詩人の武器は楽器なのだ。
「おぉ! そうだった。すまん、すまん」
男は大袈裟に驚くと、吟遊詩人の肩をバンバンと強く叩いた。吟遊詩人は「痛いですぅ」と唄いながら、顔をしかめている。
「ここは敵のアジトにぃ〜、近いんじゃなかったでしたっけ〜」
メロディに乗せるかのように、男は喋りながら唄う。
前髪を眉付近で真っ直ぐに切りそろえた、赤みがかったブラウン系の癖のない髪。目の色が判別できないほど度の強そうな丸い眼鏡を掛けている、私と同年代くらいの少し太めの男だった。
背は私よりも若干低めだ。小柄な体型のわりには服の上から羽織っている青いマントが、少し大きいようにも感じられた。
隙間から覗いている手には小型のハープが握られていた。先程から聞こえてくる音は、この楽器から奏でられていたものだろう。
格好は明らかに吟遊詩人だった。現に持っているハープには、精霊石が埋め込まれている。吟遊詩人の武器は楽器なのだ。
「おぉ! そうだった。すまん、すまん」
男は大袈裟に驚くと、吟遊詩人の肩をバンバンと強く叩いた。吟遊詩人は「痛いですぅ」と唄いながら、顔をしかめている。