甘い魔法―先生とあたしの恋―


「……?」


固まったように動かない和馬を不思議に思って見上げていると、和馬はあたしの視線に気付いて慌てて笑顔を作った。


「そっか……そいつも実姫の事好きなのか?」


わざとはぐらかした事を聞かれてしまって、あたしはためらいながらもゆっくりと頷いた。


「多分……」

「……多分?」

「実姫、照れてるだけで、本当はばっちり両思いだよ。安心して、和馬くん」


はっきり頷かなかったせいで歪んだ和馬の表情に、諒子がフォローを入れる。

和馬は諒子に一瞬だけ視線を移して……そして、あたしの机の上あたりを見つめた。


「そっか……両思いか。よかったな、実姫」


和馬の笑顔に、ありがとう、とは言えなくて。

あたしは曖昧に笑う事しか出来なかった。


「じゃあ、俺戻るな」


笑顔を作って教室を出る和馬の背中に、胸が痛んだ。



 ※※※



その日は先生の授業もなかったし、夕食も一緒にはならなかった。

つまり……朝、会ったきり。


別に、授業がなくたって夕食で会わなくたって、明日の朝になればまた顔を合わせられる訳だし……。


1日に1度顔見られればそれで十分だし。

……とか、いい訳してる時点で、かなり好きみたいだし。


まだ帰ってこないのかな、とか

また飲み会かな、とか……。

寮に帰ってきてからそんな事ばかりを考えてしまう自分に、小さく笑いを零す。


同時に深い息をはー、と吐き出す。


自分の気持ちが大きすぎて、なんだか癪に障る。



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