私、海が見たい
中村は、自分の近況を話すことにした。
もう昔の事は引きずってないから、
安心しなよと、言おうとしたのだ。
「実は、この前、俺、見合いをしたんや」
「へえ、どんな人?」
「それが、まるで
子供の相手をしているみたいなんや。
俺より五つ位年下やったかな。
子供のお守じゃないっつうの。
だけど俺もそろそろ身を固めんとなぁ。
今までずっと一人やったけど、
一人ではわからんことも
あるやろうからね」
「それで?」
「結局、断られてしまったんやけどな」
「そう、その人、見る目が無いのね」
「ホンマやな。ハハハハ。
でも、もし断られていなかったら、
君には電話していないやろうからね。
その点では彼女に感謝せな。
この道も、その時
彼女を連れてった道なんや」
「そう」
恵子は、海のほうを向いて、
黙り込んでしまった。