私、海が見たい

中村は、口を真一文字にして、考えている。

中村は決心した。大きく息をする。

しかし、全く迷いがないわけではない。

少しためらいながら、

「俺は…………
 俺は、ずっと……思ってたんや。
 ………………、

 なんで、君が横にいないんやろうって
 何度も何度も考えたんや。
 でも、どうしようもなかった。
 しかし…………、
 しかし、
 君が帰ってきてくれるんなら……」


そう言いながら、中村の中に、
違和感が広がって行く。

(違う。
 それは、さっきまでの気持ちだ。
 今はもう、吹っ切ったんだ)


そう思いながらも、中村は、
今手の届く所にいる恵子を、
振り切る事が出来なかった。

「私もあの時、どうかしてたんだわ。
 こんなあなたを振るなんて」


(今頃、何を言ってるんだ)


「しかし、俺には経済力が無かった。
 “愛情だけでは、結婚はできない”
 君はそう言ったんやで」


「あの時は、そう思っていたの」


そう言って恵子はまた、泣きじゃくり始めた

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