勇者は僧侶のなんなのさ
無理に起こしたところで、また直ぐに眠ってしまうはず。


そして、もうちょっとだけこのかわいい寝顔を見ていたい。


「起こさないでおこうよ」


「了解。よいしょ」


シサは近くにあった椅子を引き寄せて座った。


そしてポケットの中から本を取り出し、読みはじめる。


「何を読んでいるの?」


聞いてみると、シサは本の表紙を見せてくれた。


そこには「黒魔術の勃興」とある。


黒魔術とは、一口に言えば攻撃魔法の事。


回復が最大の目的である白魔法とは対極の存在である。


「…………なんでそんなの読んでいるの?」


「興味。あと、同じ魔法だから」


何故か目を輝かせながら語るシサ。


「黒魔法、良い」


「それを言ったらまずいだろ」


でも、黒魔法の方がシサにはお似合いかもしれない。


今着ている真っ白いローブを黒に変え、大鍋で怪しい薬品を調合するシサ。


似合うには似合うのだが、シサではなんだか妙になまめかしいような気がする。


「今エッチな事考えた?」


「考えてない! 考えてない! 考えてない!」


「その慌てぶりが怪しい、とは言わないでおくよ」


「言ってるじゃん」
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