勇者は僧侶のなんなのさ
「質問に質問で返すなって教わらなかった?」


「人に名前を尋ねるときは、まず自分からって教わったけど?」


シサとミユの間で火花が散る。


消火活動をせねば。


「僕はフェイ。この人はシサ。僕達は王国の、言わばテロ対策本部みたいなところに属しています」


「王国ね…………」


「王国がどうかしましたか?」


「王国と言っても、その王は傀儡。実際は為政の権利を奪われた、ただのお飾り。だから、国民は誰も王に敬意を払わない。王室のスキャンダルや確執が一番国民に興味をもたれている。皮肉なものね。一番この国で偉いはずの人が、一般人に好奇の目で見られている…………」


「それはそれで、良いんじゃないですか? 世襲制の絶対王権は常に腐敗の可能性をはらんでいるんだし。圧政に比べたら、スキャンダルなんてかわいいものですよ」


「何が言いたい?」


シサの声がとげとげしている。


「別に。ただ、世の中は皮肉だと思っただけ」


「そう。関係ない話はしないで」


「シサ。ちょっと落ち着いて」


「落ち着いているわよ」


シサの表情に変わりは無い。


だが、長い付き合いだからシサが興奮していることぐらいすぐわかる。


目尻が釣り上がっているのだ。
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