勇者は僧侶のなんなのさ
「だけど、この力があるから今はこうしてお金を沢山貰って仕事できるし、仲間も出来た。こんな事をしたギルドのお偉いさんを許す気にはならないけど、恨んでいるという事は無いなぁ。もし恨んでいるなら、今ギルドの上へ行って殺してしまう事だって、この体ならできる。けど、今が楽しいし、環境なんていつでも変えられるから、このまま生きて行こうと思う」


「…………外に出たい」


ミュはすっと立ち上がり、有無を言わさずドアへ向かった。


ランスも立ち上がり、ミュの後に着いていく。


ミュはランスを睨みつけたがランスはニッと笑い、追い立てるように外へ出た。


「護衛かな?」


「多分」


「ランスの腕はもう大丈夫なの?」


「保障する」


「なんとなく、いつも通りに戻った気分だよ」


そういってシサに笑いかけたが、シサは勝手に部屋の本棚を漁りだした。


今のシサに話し掛けると、例外なく嫌な顔をされる。


暇なので窓の外を見ると、空は曇っていて太陽が見えなかった。


しかし、一カ所だけ強く発光してる雲があるので、あの奥に太陽があるのだろう。


「ミュはさ、生きていて楽しいのかな」


シサに聞いているのかどうか、自分でも分からなかった。
< 68 / 78 >

この作品をシェア

pagetop