勇者は僧侶のなんなのさ
ランスはふーと息をつき、ミュとシサの間にその身を埋めた。


「左にはシサの双丘、右にはミュの寝顔。どうだ、羨ましいだろう」


「ランスはそっち系なの?」


「ふ、余裕をアピールしているようだが、息が荒くなっているぞ!」


「何、迂闊」


そう言っておけば、ランスもご満悦だろう。


立ち上がり、コートと財布を掴む。


「どこへ行くのか?」


「夜の散歩だよ」


「私も同行する!」


「ランスは寝てなさい。じゃ、ミュとシサを頼むよ」


「あ、フェイ!」


ランスの声を無視してドアを開けた。


外は暗いが、周囲の家にある街灯や星明かりが夜道をぼんやり照らしている。


玄関から一歩足を踏み出すと、冷えた風が吹き抜けて行った。


昼間ならともかく、夜はコートを羽織りたいくらいの気温。


虫もまだ起き出すには早いようで、鳴き声は殆ど聞こえない。


服のボタンをしっかりと留めてから、軽快に夜道を歩いた。


この散歩の目的は、ギルドの傍にある小さな酒場へ行くこと。


ギルドの通りを東へ少し行った所にある酒場で、ギルドの人間の出入りを見ない。
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