勇者は僧侶のなんなのさ
いくら小さくて目立たないとはいえ立ち寄ろうとする人はいそうだが、塗装が剥げている看板と申し訳程度の豆電球が燈る入口で尻込みするのかもしれない。


黒い木製のドアを開けると、からんころんと鐘の音が頭の上で鳴った。


薄暗い店内にはカウンター席と、備え付けの四角い机が三つあるだけ。


客はカウンターに頭髪の薄い男が一人、琥珀色の液体が入ったグラスを手に遠くを見つめている。


店長のクロスが気づいたようで、目を合わせてきた。


目が細く開いているのか閉じているのか分からないが、顔を向けてきたので視認しただろう。


手を振ると、クロスは再び皿を拭く手元に目を落とす。


「こんばんは。お好きな席へどうぞ」


ぼそぼそとした声。


それを聞きながら、いつも座るカウンター席一番端へ。


「元気になるものください」


そう注文したらクロスは返事もせずに持っていた白い大皿を置き、後ろにある冷蔵庫を開けた。


赤い液体の入ったラベルの読めない瓶や、袋詰めされている紫の野菜が見える。


老婆が呻くようなモーター音を出す冷蔵庫から、赤と黄が混ざったような色の液体が入った瓶をクロスは出した。
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