勇者は僧侶のなんなのさ
したり顔で腕を組んでいる。


「ランス…………」


「酷い間抜け面だな。ギルドの恥になりそうな程だ」


つかつかと歩み寄ってくるランス。


クロスも男性客も、破天荒な乱入者に目が奪われていた。


皿を拭く手も、酒を飲む手も止まっている。


「どうしてここが?」


「ギルドマスターとして、フェイの行きつけの店くらい把握しているのだよ」


真横に来た。


そして断りも無しに隣へするりと座る。


「え?」


「私も喉が渇いた。店長、何か爽やかな物を」


「…………ランスはまだお酒飲んじゃだめな年齢だね。ノンアルコールにしてください」


クロスに頼む。


「良いじゃないか、カクテルで!」


「子供にはまだ早いよ」


ランスは膨れっ面で睨み上げて来たが、仕方ないと呟いて視線をそらした。


片眉を上げて聞いていたクロスも、静かに背中を向けて冷蔵庫を開ける。


「初めて入ったが、中はこうなっていたのか」


頭をぐるぐると回し、周囲を見ている。


「あんまり周りを見ると失礼だよ。ジッとしてなさい、とは言わないけど大人しくね」


「大人じゃないから、無理な注文だな。酒を飲ませてくれないのだから、子供だ」


手元にある野菜カクテルを、ランスの前に横移動させる。
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