溺愛コンプレックス
体育祭の実行委員長が、委員が集まった教室に入ってきた。


「げ」


剣道部部長、3年のレン先輩だ。

私、この人超苦手。
背が高くて凛々しい顔立ちだけど、冷徹人間。
去年の林間学校で同じ班になって、すっごい厳しかったのを今でも覚えている。
みんなの足をひっぱりまくった私に『君はいい年して何にもできないんだな』と言い放ち、一刀両断にされた嫌な思い出がある。

ちらり、とレン先輩がこちらを見て、ふっと笑った。私はバカにされたと思ってムッとした。

「カナメ、カナメ!」

隣の席に座ったカナメが顔をよせる。


「あの人だよ、去年言ってた林間学校で冷たかった人!超怖いよ!気をつけてね」


カナメはレン先輩を見て、ふーん、と唸るだけだった。
ちょっとその視線が、いつもの優しいカナメの目と違う気がしたのは、私の勘違いかな?

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