自分探しの旅

円心はというと、先ほどからどうも様子がおかしい。意識がどんどんかすんでいく。目の前には大黒天が浮かんでいる。大黒天は今までも何度か目にしてきた。だが今見えているそれは、今までよりも遙かに鮮明に見てとれた。やがてその先に「もう一人の自分」が現れた。

『私は何をしているのだろう。』

　円心は、自分が見ているものが何であるのかよく理解できなかった。目の前には箱のようなものが置かれている。その箱から女の声が聞こえている。見るとその箱の中には、もう一つ別の世界が映っている。その中で誰かが歩きながら何かを言っている。

『いっきゅうあん？』

　それを見ている「自分」は左手に酒の匂いがする物を持っている。右手で何かをかちかちと動かしている。その度にはこの中の絵が動いている。

『これは・・・』

　円心は突然、底なしの穴の中へ突き落とされたように感じた。どこまでもどこまでも深く落ちていく。その時だった。誰かが「自分」を呼ぶ声が聞こえる。

『
きょうすけ・・・きょうすけ・・・』


『？』


『京介・・・起きろ。京介・・・』