君の瞳に映る色

櫂斗は玲と同じように色が
見えなければ
ただの人間に見える。

黙っている間に櫂斗は棗の意見も
聞かずに当然のように
ワインを頼んだ。
ボーイが行ってしまうと顔の前で
手を組んで棗に視線を戻した。

「緊張してる?」 

何も話さない棗に聞いてくる。
面倒なので少し、と答えた。

そんな棗の様子に可愛いなぁ、
と笑って言う。

写真で見るよりずっと綺麗だし、
と独り言のように櫂斗は呟いた。

顔すら知らなかったのは
自分だけか、それに気づいて
心の中で苦笑いした。

料理が運ばれてきて櫂斗が
グラスを乾杯と掲げたので
棗もそれに倣う。

料理を食べながら棗はチラチラと
櫂斗を盗み見た。

ブラウンの櫂斗の瞳も人の血を
吸う時は赤く光るのだろうか。

櫂斗の持つ『色』は玲よりも
濃い闇の色のように感じる。
他の色も少しは見えるが
読み取りづらかった。
そもそも人間とヴァンパイアは
結婚できるのだろうか。

東條家は…、遠回しに聞いてみる
ことにして棗は話しかけた。

「伝統がおありでしょうね。
わたしで大丈夫でしょうか」







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