君の瞳に映る色

この結婚は契約…。
棗は櫂斗の言葉を頭の中で
反復する。

自分の考えていたことが
どれだけ現実味がなく甘い
考えだったんだろうと思う。

櫂斗と一緒に店を出て
エレベーターに乗り込む。
棗は目を伏せてそっと薬指に
嵌まっている指輪に触れた。

指輪はその証、勝手に外すことは
許さない、櫂斗はそう言った。

まるで悪魔の契約のよう。

棗は身体を小さく震わせた。


数階降りたところで
エレベーターのドアが開く。

櫂斗が棗の腰を抱くようにして
エレベーターを降りた。
棗はびっくりして櫂斗を
振り仰ぐ。

彼は少し笑いを浮かべ、部屋を
とってある、と平然と言った。



固まっている棗を強引に引き寄せ
櫂斗は部屋の鍵を開けて中に
入った。

わけがわからないまま棗の後ろで
ドアが音を立てて閉まる。

スイートルームの部屋は
入ったところがリビングのような
雰囲気でソファーやテーブル、
テレビなどが配置されていた。

櫂斗は棗の腰にしっかりと手を
回し奥へと連れていく。

「下に車を待たしています、
帰らないと…」

棗の訴えにも櫂斗は止まる
気配がない。

「たかが使用人だろ、
放っておけばいい」

でも、と言い掛けた棗の唇を
櫂斗は無理やり塞いだ。

身体を離そうと棗は手で櫂斗の
胸を押し返すが、逆にその手を
掴まれ壁に押しつけられる。






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