君の瞳に映る色


袖口のボタンが外れているの見て
棗は反対側の手を伸ばした。

手首の後もすっかりきれいに
なっていた。

暁生から櫂斗は監視つきの
自宅謹慎で済んだと聞かされた。

ちょうど暁生の家に来ていた
トモキが軽すぎると
愚痴っていたが、棗はそれで
良かったように思えた。

スカートのポケットから
棗は指輪を取り出す。

「結局、返しそびれちゃったわ」

孤独な人、自分と同じように。

玲が元気になった今だから、
いつか癒される日があの人にも
来ればいいと思える。


自分の部屋が近付くにつれ
見知った色の気配を感じて
棗はドアに駆け寄った。






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