君の瞳に映る色


ドアを開けると、
窓枠に腰掛けてティアラを
抱えた玲の姿があった。

「…勝手に女性の部屋に
入らないでって、あなたには
言っても無駄みたいね」

わざと冷たい調子で言うと
朝の白い光を浴びながら
玲は笑う。

「始業時間まで待てなくてさ」

近寄ってきた玲が
棗を抱き寄せる。

こうしたくて、と耳元で囁く玲に
棗は身体を捩った。

「ちょっと、誰かきたら…」

「こない、こない」

何を根拠に、とは思ったが
いつもの調子の玲に何となく
その身を委ねそうになる。

どうしてこの男の色はこんなに
落ち着くんだろう。

そんなことを考えていると、
突然部屋の扉が開いた。


「………何をしているの」


低い声に振り返ると
ドアの傍に菖蒲が立っていた。

「お、お母様」

「やべっ」

見る見る間に険しくなる
菖蒲の顔に言い訳すら
出てこない。





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