君の瞳に映る色
棗は仕方なく瑠璃に
『色』の話をした。

真剣に静かに聞いていた瑠璃が、
ロマンチックですねと言った。

その言葉に
棗は思わず苦笑いする。

見えない者にはわからない。
この能力がどれだけ自分を
苦しめ疲れさせたか。

子供の頃は楽しいと思った。

誰にもマネできない
力を持っている。

それは自慢でもあった。

でも気付いてしまった。
心の奥で人が
なにを考えているかなんて
知らない方が幸せなんだと。

色など見たくない。
何度この能力が
消えればいいと思ったか。


黙った棗を瑠璃は見つめた。

保健室で始めてその姿を見たとき
うわさどおりの美人だと思った。

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