君の瞳に映る色
「お帰り、お嬢様」

暗い自分の部屋に
玲の声が響いた。

心臓がビクッと震える。

驚いた棗の手からは
いろんなものが滑り落ちる。
落ちたものの上に猫も落下した。

声のした方を見ると
暗闇に玲の目だけが光った。

「黒猫だ」

玲が身体を屈めると
ベッドが鈍い音で軋んだ。
暗闇にとけた猫の身体は
あっという間に見えなくなる。

棗はドアのそばの
電気のスイッチを入れた。
思わず眩しさに目を細める。

黒猫はベッドの上にいた
玲に抱かれていた。

「勝手に女性の部屋に
入るなんて…」

落としたものを拾いながら
呟いた棗に前にも来ただろ、と
玲は笑った。

「美人だな、この子」

棗のベッドに寝転がり
胸元で玲は猫をあやしている。
首をなでられ
気持ち良さそうな声で
猫が鳴いた。



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