【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
グラスを用意しながら独り言の
様にマスターが呟いた。
『…いや、これセクハラ発言
じゃ無いんだよ?
大丈夫だって!ローザちゃん
なら直ぐに新しいカレシが
出来るって!』
その言葉に一瞬、自分でも
気付かない程の寂し気な笑みを
浮かべた麗子だが、マスターに
笑い掛けながら気丈に振る舞い
こう言った。
『…実は、ついさっき失恋
リベンジして来たばっかり
なんです!
浮気しといて酷い事言うから、
卵とケーキぶつけて追い返して
やりました~!』
明るく言ったつもりだったが
また涙が溢れて来る…
コト#
上を向いて涙が流れるのを
堪えていると、マスターの
手によって目の前にカクテルの
グラスが置かれていた。
『忘れちゃえーぃ!
二度目ましての印しに、これは
俺の奢り…。
泣いたっていいじゃん!
一つの恋が終わったら、
もぉ~二度と誰も好きに
ならないっ!って誓ってもさ、
トランプと一緒でさ、不思議と
また違うカードが巡って来るん
だよね…!
次、次!次行ってみよぉ~!
焦らずゆっくりと…。』
そう言って左の口角を上げ
ながらマスターがウインク
して見せた。