世界と僕は戦っている きっと世界が勝つだろう
「あたしね、思ったんだ」


 ほんの少し震えた森川の言葉が秋風に乗って俺の耳に辿り着く。

 カツン、カツンと小さな足音が徐々に近づくと俺の斜め後ろで止まった。


「あの子、強かったけど逃げた。
こんな風に言ったらみんな悲しむから言いだせなかったけど」

「『自殺 イコール 逃げる』なんて安直だ。
そんなこと言うなよ」

「長村だってそう思ってるくせに!」


 まるで頬を平手でぶん殴られたみたいな衝撃だった。

 とっさに「そんな事思ってない!」と叫びたかったのに出てこなかった。


 いや、森川の言うように心のどこかで、それこそ目に見えないぐらいのひとかけらでもそう思っていたからか反論出来なかったんだと思う。


 俺が面食らって森川を黙って見下ろしていると強い視線で見上げられた。


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