月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
そのままジュースを吐き出した馬場に、江川が駆け寄った。

「どうした馬場!?」

医者の息子だけあって江川の行動は迅速だった。

自分は馬場を介抱しながら、椎名には保健医を呼ぶように言い、天堂には職員室へ行くように指示した。

「なぜ職員室へ?」

達郎が訊くと由美は

「もしかしたら保健の先生が帰宅してるかもしれないからって」

「ああ、放課後でしたからね」

「よくそこまで頭が回るもんだと、後で感心したわ」

結果、保健医が駆けつけ、職員室にいた教師が救急車を呼び、馬場は事なきをえた。

「事件の話はこんなものでいいかしら?」

由美がそう言った時、達郎は唇を尖らせていた。

左のこめかみ辺りを指先で軽く叩く。

自分なりに話の整理をしようとしているように見えた。

「訊いていいですか」

「なに?」

「どうして佐伯先輩の分のジュースはなかったんですか」

「あたしはいつも遠慮してるの」

「遠慮?なぜです?」

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