-境界リセット-
「……帰ろっかな…」
待ち合わせは、午後二時だった。
なのに。
20分待っても来ない。
メールもない。
「わたし、からかわれただけなのかな」
そのメル友「ジョウ」さんは、大学生。
高校一年の私よりも5つも年上だ。
――からかわれて
――遊ばれた
やっぱり、そういうことなのだろう。
「……あっつぅ……」
さっきまでよりも、日差しが強く感じる。
カバンに差さったひまわりの色の鮮やかさは、目に痛い。
「あっはははは!!」
「なにそれ、ばっかじゃないのー?」
目の前を過ぎていく誰かの甲高い笑い声。
ちくり、と胸の奥に小さな刺が刺さる。
こんな私をだれもが馬鹿にして笑っているように思えた。
…それだけ、
私はジョウに遊ばれていたということに傷ついていた。
私ひとり舞い上がって、
ほんと、馬鹿みたいだ。
溜め息をひとつ、幸せと共に吐き出して。
帰ろうと、駅の方へと引き返す。
「…"ウメ"さんですか?」
柔らかい低温の声と共に、
私の視界のなかで太陽の光を照り返す焼けたアスファルトに、
――影が差した。